妊娠力を上げるカギ『子宮内フローラ』

2025.08.06栄養

妊娠力を上げるカギ『子宮内フローラ』

近年、妊娠のカギとして注目されている「子宮内フローラ」
この子宮内フローラを整え、妊娠しやすい体を作るための食事法について
ご紹介します

■ 赤ちゃんを迎えるための“お部屋”づくり、子宮内フローラとは?

これまで無菌だと考えられていた子宮内にも
腸内と同じように細菌の集団(フローラ)が存在することが分かってきました
これが「子宮内フローラ」です

研究により、この子宮内フローラの状態が
受精卵の着床や妊娠の継続に深く関わっていることが明らかになっています
具体的には、善玉菌である「ラクトバチルス」が90%以上を占める良好な状態だと
妊娠率や出産率が高まるという報告があるのです
ラクトバチルスは、子宮内を弱酸性に保ち、悪玉菌の増殖を防いで
受精卵が着床しやすい環境を整えてくれる大切な存在です 1)2)

■ ヨーグルトだけじゃない!善玉菌を増やすヒント

子宮内フローラを整えるには、直接子宮に菌を届けるのではなく
まず「腸内環境」を整えることが非常に重要です
腸と子宮は近い場所にあり、互いに影響しあっているため
腸活が子宮内環境の改善に繋がります 3)

当院では乳製品をおすすめしていませんが、
日本の伝統的な和食には善玉菌を増やし、育てる食材が豊富に含まれています

◇善玉菌そのものを摂る「発酵食品」

納豆、味噌、醤油麹、塩麹、ぬか漬け、キムチなどが代表的です
これらの発酵食品には植物性の乳酸菌などが豊富に含まれており
毎日の食事に少しずつ取り入れるのがおすすめです

◇善玉菌のエサとなり、菌を育てる「水溶性食物繊維」と「オリゴ糖」

水溶性食物繊維: 善玉菌の良いエサになります
海藻類(わかめ、もずく、めかぶ)、きのこ類、ごぼう、
アボカド、もち麦などに多く含まれます

オリゴ糖: こちらも善玉菌のエサとなります
玉ねぎ、ごぼう、にんにく、アスパラガス、ブロッコリーの茎、とうもろこし
大豆、きな粉、納豆、みそ、りんご などに含まれています

■ 子宮内フローラのために、今すぐ見直したい食習慣

善玉菌を増やす食事を心がける一方で、
悪玉菌を増やしてしまう可能性のある食品はなるべく避けたいものです

◇インスタント食品やスナック菓子、菓子パンなど
食品添加物や、トランス脂肪酸などの質の悪い油は
腸内環境を乱す原因になります.

◇白砂糖を多く使ったお菓子や清涼飲料水
悪玉菌のエサになりやすいため、
甘いものが欲しい時は、オリゴ糖を含む果物や
質の良いはちみつなどを少量摂るようにしましょう

◇過剰な動物性たんぱく質
お肉も大切なたんぱく源ですが、偏りすぎると
腸内環境の乱れに繋がることがあります
魚や大豆製品とバランス良く摂ることを意識しましょう

妊娠に向けた体づくりは、特別なことばかりではありません
日々の食事を少し見直すことで、
赤ちゃんを迎え入れるための居心地の良い子宮環境を育むことができます
まずは、お味噌汁に海藻やきのこをたっぷり入れる、
ご飯に玄米やもち麦を混ぜてみる、
そんな小さな一歩から始めてみませんか?

管理栄養士

*参考文献*
1)Moreno I, Codoñer FM, Vilella F, Valbuena D, Martinez-Blanch JF, Jimenez-Almazán J, Alonso R, Alamá P, Remohí J, Pellicer A, Ramon D, Simon C. Evidence that the endometrial microbiota has an effect on implantation success or failure. Am J Obstet Gynecol. 2016 Dec;215(6):684-703.
2)Kyono K, Hashimoto T, Kikuchi S, Nagai Y, Sakuraba Y. A pilot study and case reports on endometrial microbiota and pregnancy outcome: An analysis using 16S rRNA gene sequencing among IVF patients, and trial therapeutic intervention for dysbiotic endometrium. Reprod Med Biol. 2018 Oct 25;18(1):72-82.
3)Elkafas H, Walls M, Al-Hendy A, Ismail N. Gut and genital tract microbiomes: Dysbiosis and link to gynecological disorders. Front Cell Infect Microbiol. 2022 Dec 16;12:1059825. doi: 10.3389/fcimb.2022.1059825. Erratum in: Front Cell Infect Microbiol. 2023 May 12;13:1211349.