コロナ禍を経て、アルコール消毒や頻繁な手洗いがすっかり日常になりましたね
もともときれい好きな私たち日本人ですが
その徹底した衛生習慣が
実は未来の赤ちゃんを迎えるための体づくりに
思わぬ影響を与えているかもしれません
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◆失われる「常在菌」との共生
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私たちの皮膚や腸には体を外部の病原菌から守ってくれる
「常在菌」という大切なパートナーがいます
彼らは、いわば体のバリア機能の一部
なので過剰なアルコール消毒や手洗いは
悪玉菌だけでなくこの有益な常在菌まで根こそぎ洗い流してしまいます
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「菌=悪」ではありません
むしろ多様な菌と共生することが私たちの免疫機能を正常に保ち
健康を維持する鍵なのです
この「菌との共生バランス」が崩れることが腸内環境の悪化
そして妊活への影響につながっていきます
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◆腸内環境の乱れが生殖能力にブレーキをかける
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腸内環境の重要性は、妊活においても例外ではありません
腸内細菌は女性ホルモンである「エストロゲン」の量を
調整する重要な役割を担っていることが分かっています
過剰な衛生習慣などで腸内細菌の多様性が失われると
ホルモンバランスが乱れ、月経不順や子宮内膜の環境悪化を招く可能性があるのです
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さらに、腸の乱れが引き起こす慢性的な炎症は
卵子の質や、受精卵が着床する子宮内膜の状態に
悪影響を及ぼすことも懸念されています
実際に腸内環境に配慮した食事が不妊リスクの低下に関連する
という報告もあります
つまり妊娠しやすい体づくりは
豊かな腸内環境を育むことから始まると言えるのです
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◆今日から始める「常在菌と仲良くする」育菌ライフ
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ではどうすれば良いか、のキーワードは「除菌から育菌へ」
常在菌と上手に付き合うライフスタイルへの転換です
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1.衛生習慣にメリハリをつける
帰宅後や調理前、食事の前といった基本の手洗いは
石鹸で丁寧に行いましょう
一方で必要以上に神経質になってアルコール消毒を
繰り返すのは少し控えてみる勇気も大切です
自分の体を守ってくれる常在菌の存在を意識してみましょう
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2.食事で積極的に「育菌」する
前回もお知らせした内容ですが
良い菌を摂る(プロバイオティクス)
→ 納豆、味噌、キムチなどの発酵食品を毎日の食卓に。
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自分の菌を育てる(プレバイオティクス)
→ 野菜、果物、海藻などに豊富な「食物繊維」や
玉ねぎ、ごぼうに含まれる「オリゴ糖」は
あなたの腸にいる善玉菌のエサになります
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多様性を育む
→ 特定の食品に偏らず、魚や野菜中心の伝統的な和食のように
様々な食材をバランス良く食べることが、豊かな腸内環境を育みます
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清潔を保つことはもちろん大切ですが
過剰な除菌は私たちの体を守るバリアまで壊しかねません
これからは菌をむやみに排除するのではなく
良い菌を育てて味方につける「育菌」という視点を
ぜひ妊活に取り入れてみてください
「常在菌と仲良くし、豊かな腸内環境を育むこと」
それこそが、新しい命を育むための健やかな体づくりの第一歩となるはずです
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管理栄養士