妊活で注目される「ビタミンD」

2025.08.20栄養

妊活で注目される「ビタミンD」

「妊活中に大切な栄養素」と聞くと、
多くの方が「葉酸」を思い浮かべるのではないでしょうか
もちろん葉酸は非常に重要ですが、
近年の研究でそれと並んで妊娠の成立と維持に
深く関わっていることが明らかになった栄養素があります
それが「ビタミンD」です

ビタミンDは女性の生殖機能において
まるでホルモンのように働く「スーパービタミン」なのです 1)
当院では数年前からこのビタミンDに注目し
血液検査の実施やサプリメントの推奨を行っています
ビタミンDがなぜ妊活の中で注目されているのか、その3つの大切な理由を話題にします

1.質の良い「卵子」を育む力
元気な赤ちゃんを迎えるためには、質の良い卵子が不可欠です
ビタミンDは、卵子を育む袋(卵胞)の中の「卵胞液」に存在し
卵子の成熟をサポートしていることが分かっています
体内のビタミンDが充足していると、卵子の質が向上し
体外受精の成功率が高まるという研究報告もあるほどです 2)

2.受精卵が着床しやすい「ふかふかのベッド」を作る力
受精卵が子宮内膜にしっかりと着床することは妊娠成立の鍵です
ビタミンDは子宮内膜が受精卵を受け入れる準備をするために必要な
遺伝子の働きを高めることがわかっています
つまりビタミンDは受精卵にとって居心地の良い
「ふかふかのベッド」を用意する手助けをしてくれるのです 3)

3.妊娠を継続させる「免疫の調整」力
妊娠はお母さんの体にとって半分は異物である受精卵を
攻撃せずに受け入れるという特殊な免疫状態です
ビタミンDにはこの免疫システムを適切にコントロールし
過剰な攻撃反応を抑える働きがあります
この「免疫寛容」という働きによって
着床不全や初期流産のリスクを減らす可能性が期待されています 3)

これほど重要なビタミンDですが
実は日光を浴びる機会の減少や食生活の変化から
ほとんどの日本人女性が不足傾向にあります 4)
当クリニックのデータでも、
多くの方が妊娠に理想的な数値(30ng/mL以上)に達していません

ビタミンDはサケやサンマなどの魚類、きのこ類に多く含まれますが
食事だけで十分な量を摂るのはなかなか難しいのが現状です
ご自身のビタミンD濃度が気になる方は
自費となりますが血液検査で調べることができます
まずはご自身の体の状態を知り
必要であればサプリメントなどを活用して
妊娠に向けた最適な体作りを始めませんか?

「私の場合はどうなんだろう?」と思われた方は
ぜひ一度、医師に相談し血液検査を実施してみてください
栄養士にご相談下されば、一緒に最適な栄養プランを考えていきます

*参考文献*
1)Dragomir RE, Toader OD, Gheoca Mutu DE, Stănculescu RV. The Key Role of Vitamin D in Female Reproductive Health: A Narrative Review. Cureus. 2024 Jul 28;16(7):e65560. doi: 10.7759/cureus.65560. PMID: 39071069; PMCID: PMC11283644.
2)Grundmann, M., von Versen-Höynck, F. Vitamin D - roles in women's reproductive health?. Reprod Biol Endocrinol 9, 146 (2011). https://doi.org/10.1186/1477-7827-9-146
3)Ganguly A, Tamblyn JA, Finn-Sell S, Chan SY, Westwood M, Gupta J, Kilby MD, Gross SR, Hewison M. Vitamin D, the placenta and early pregnancy: effects on trophoblast function. J Endocrinol. 2018 Feb;236(2):R93-R103. doi: 10.1530/JOE-17-0491. Epub 2017 Nov 6. PMID: 29109081.
4)Hideaki Nakajima et al.,Estimation of the vitamin D (VD) status of pregnant Japanese women based on food intake and VD synthesis by solar UV-B radiation using a questionnaire and UV-B observations,The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology,Volume 229,2023,106272,ISSN 0960-0760,
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