「妊活中に大切な栄養素」と聞くと、
多くの方が「葉酸」を思い浮かべるのではないでしょうか
もちろん葉酸は非常に重要ですが、
近年の研究でそれと並んで妊娠の成立と維持に
深く関わっていることが明らかになった栄養素があります
それが「ビタミンD」です
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ビタミンDは女性の生殖機能において
まるでホルモンのように働く「スーパービタミン」なのです 1)
当院では数年前からこのビタミンDに注目し
血液検査の実施やサプリメントの推奨を行っています
ビタミンDがなぜ妊活の中で注目されているのか、その3つの大切な理由を話題にします
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1.質の良い「卵子」を育む力
元気な赤ちゃんを迎えるためには、質の良い卵子が不可欠です
ビタミンDは、卵子を育む袋(卵胞)の中の「卵胞液」に存在し
卵子の成熟をサポートしていることが分かっています
体内のビタミンDが充足していると、卵子の質が向上し
体外受精の成功率が高まるという研究報告もあるほどです 2)
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2.受精卵が着床しやすい「ふかふかのベッド」を作る力
受精卵が子宮内膜にしっかりと着床することは妊娠成立の鍵です
ビタミンDは子宮内膜が受精卵を受け入れる準備をするために必要な
遺伝子の働きを高めることがわかっています
つまりビタミンDは受精卵にとって居心地の良い
「ふかふかのベッド」を用意する手助けをしてくれるのです 3)
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3.妊娠を継続させる「免疫の調整」力
妊娠はお母さんの体にとって半分は異物である受精卵を
攻撃せずに受け入れるという特殊な免疫状態です
ビタミンDにはこの免疫システムを適切にコントロールし
過剰な攻撃反応を抑える働きがあります
この「免疫寛容」という働きによって
着床不全や初期流産のリスクを減らす可能性が期待されています 3)
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これほど重要なビタミンDですが
実は日光を浴びる機会の減少や食生活の変化から
ほとんどの日本人女性が不足傾向にあります 4)
当クリニックのデータでも、
多くの方が妊娠に理想的な数値(30ng/mL以上)に達していません
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ビタミンDはサケやサンマなどの魚類、きのこ類に多く含まれますが
食事だけで十分な量を摂るのはなかなか難しいのが現状です
ご自身のビタミンD濃度が気になる方は
自費となりますが血液検査で調べることができます
まずはご自身の体の状態を知り
必要であればサプリメントなどを活用して
妊娠に向けた最適な体作りを始めませんか?
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「私の場合はどうなんだろう?」と思われた方は
ぜひ一度、医師に相談し血液検査を実施してみてください
栄養士にご相談下されば、一緒に最適な栄養プランを考えていきます
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*参考文献*
1)Dragomir RE, Toader OD, Gheoca Mutu DE, Stănculescu RV. The Key Role of Vitamin D in Female Reproductive Health: A Narrative Review. Cureus. 2024 Jul 28;16(7):e65560. doi: 10.7759/cureus.65560. PMID: 39071069; PMCID: PMC11283644.
2)Grundmann, M., von Versen-Höynck, F. Vitamin D - roles in women's reproductive health?. Reprod Biol Endocrinol 9, 146 (2011). https://doi.org/10.1186/1477-7827-9-146
3)Ganguly A, Tamblyn JA, Finn-Sell S, Chan SY, Westwood M, Gupta J, Kilby MD, Gross SR, Hewison M. Vitamin D, the placenta and early pregnancy: effects on trophoblast function. J Endocrinol. 2018 Feb;236(2):R93-R103. doi: 10.1530/JOE-17-0491. Epub 2017 Nov 6. PMID: 29109081.
4)Hideaki Nakajima et al.,Estimation of the vitamin D (VD) status of pregnant Japanese women based on food intake and VD synthesis by solar UV-B radiation using a questionnaire and UV-B observations,The Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biology,Volume 229,2023,106272,ISSN 0960-0760,
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管理栄養士