肥満と妊娠・出産・育児のリスク

2025.10.06BLOG

肥満と妊娠・出産・育児のリスク

ご存知の方も多いと思いますが、妊娠には痩せすぎや太り過ぎはリスクとなります
今回は、特にBMI30以上の肥満女性が
妊娠・出産・育児において直面する可能性のあるリスクと
それを改善するための生活習慣の重要性について、エビデンスに基づきお伝えします

●肥満と妊娠のリスク

BMI30以上の肥満女性は、そうでない女性と比較して
妊娠するまでの期間が長くなる傾向があることが報告されています
(メタアナリシスによるエビデンスレベルA)
これは、肥満が排卵障害を引き起こしやすいためと考えられています
多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の合併も多く
インスリン抵抗性の改善が妊娠率の向上に繋がることも示されています
また、体外受精(IVF)においても
肥満は卵巣刺激への反応性の低下、採卵数の減少、妊娠率の低下に関連するとされています

●妊娠中のリスク

妊娠が成立した後も、肥満は様々な合併症のリスクを高めます

<妊娠高血圧症候群>
非肥満女性と比較して、2~3倍のリスク増加が報告されています
(エビデンスレベルA)

<妊娠糖尿病>
同様に肥満女性は妊娠糖尿病を発症するリスクが高く
巨大児出産や新生児低血糖などのリスクも上昇します

<帝王切開率の上昇>
肥満女性では、巨大児や微弱陣痛、肩甲難産などのリスクが高まり
帝王切開となる可能性が高くなります

<血栓症>
妊娠中は血液が固まりやすくなりますが
肥満はさらにそのリスクを高め、深部静脈血栓症や肺塞栓症などの
重篤な合併症を引き起こす可能性があります

さらに、肥満は先天異常のリスクを
わずかながら上昇させる可能性も指摘されており
胎児の健康にも影響を及ぼす可能性があります

●分娩時・産後のリスク

分娩時においても肥満は
陣痛遷延、分娩停止、産後の大量出血のリスクを高めます
また、麻酔の合併症リスクや、術後の創感染のリスクも上昇します
産後も母乳育児の開始が遅れる、うつ病のリスクが高まるなど
母子の健康に影響を及ぼす可能性があります

●健康的な生活習慣の見直しが不可欠

これらのリスクを軽減するために最も重要なのは
妊娠前から健康的な生活習慣を確立し、適正体重を維持することです
バランスの取れた食事、適度な運動は、受胎率の向上だけでなく
妊娠中の合併症予防、スムーズな分娩、そして産後の母子の健康維持に不可欠です

例えば、週に150分の中強度の運動と
野菜や果物を多く含む地中海式ダイエットのような食生活は
肥満女性の妊娠率を改善し、妊娠中の合併症を減少させる効果が期待できます
とはいえ、これだけ運動や食事療法へ取り組みは
一人でできることではありません

ご不安なことがあれば、いつでもご相談ください

院長