「鉄」は生命をつなぐ魔法使い—地球と私たちの体のお話

2026.03.09BLOG

「鉄」は生命をつなぐ魔法使い—地球と私たちの体のお話

私たちは「妊娠しやすい体づくり」を大切にしています
その土台となるのが「栄養」です

今日は、『鉄は魔法使い』(畠山重篤 著)という本をご紹介しながら、
生命にとって欠かせない「鉄分」についての話です

著者の畠山さんは、気仙沼で牡蠣(カキ)の養殖をされている漁師さんです
彼は「森は海の恋人」という運動を通して、
海を豊かにするために山に木を植える活動を続けてこられました

一見、山と海、そして不妊治療は関係ないように思えるかもしれません
しかし、この本には私たちが健康に生き、
新しい命を育むための重要なヒントが隠されています

この本の中で語られているのは、壮大な鉄の循環です
植物プランクトンが海で育つためには「鉄」が不可欠です
しかし、ただ鉄があればいいわけではありません
山や森の腐葉土に含まれる成分(フルボ酸)と結びついた鉄が
川を伝って海へ流れ込むことで初めて、海草やプランクトンが吸収できる形になるのです

鉄が森から海へ運ばれることで、プランクトンが増え、小魚が育ち、豊かな生態系が作られる
著者は、死の海になりかけていた湾が、
鉄の力によって再び生命あふれる海へと蘇る様を「魔法」と呼びました

鉄は、植物にとっても、地球全体にとっても、命の連鎖を生み出す「魔法使い」なのです

人もまた、鉄なくしては生きられない

この「鉄の魔法」は、海の中だけでなく、私たち人間の体の中でも起きています

私たちの体には約37兆個の細胞がありますが、
その一つひとつが活動するためのエネルギーを作る際、絶対に欠かせないのが「鉄」です
呼吸をして酸素を取り込み、それをエネルギーに変える(ミトコンドリア回路)
この生命維持の根本的なシステムは、鉄がなければ動きません

地球が鉄不足になると生態系が崩れるように、
人の体も鉄が不足すると、細胞レベルで元気がなくなってしまうのです

不妊治療の現場で血液検査をすると、健康診断では「異常なし」と言われる方でも
実は深刻な鉄不足であるケースが非常に多く見られます

これを私たちは「貧血のない鉄欠乏(隠れ貧血)」と呼んでいます
ヘモグロビンの数値が正常でも、体内の貯蔵鉄である「フェリチン」の値が低い状態です

生きるための最低限の鉄は足りていても、余分な鉄(貯金)がない状態では、
体は「自分の命を守ることで精一杯」になります
すると、生殖機能という、生命維持の優先順位としては「次」の機能へ
栄養を回す余裕がなくなってしまうのです

・卵子の質を高める
・ふかふかの着床しやすい子宮内膜を作る
・妊娠中の赤ちゃんの成長を支える

これら全てに、たっぷりの鉄が必要です
「なんとなく疲れが取れない」「冷え性が治らない」といった不調は、
もしかすると体が発している「鉄不足のサイン」かもしれません

『鉄は魔法使い』の中で、自然界が鉄によって蘇ったように
私たちの体も適切な栄養療法と補充によって、本来持っている「産む力」を呼び覚ますことができます

当院では、単なる数値合わせではなく、
お一人お一人の「妊娠できる体」を作るための栄養カウンセリングを行っています
鉄という魔法使いを味方につけて、一緒に元気な体を作っていきましょう

院長