このたび新院長に就任いたしました柳由紀です
女性医師として、みなさまの心と体に寄り添った温かい医療を届けてまいります
どうぞよろしくお願いいたします
.
今日お届けする内容は
不妊治療において近年非常に注目されている『ビタミンD』と『免疫』の深い関係についてです
.
ビタミンDは骨の栄養素というイメージがありますが、
実は受精卵を受け入れるための『免疫のキーパーソン』です
.
「受精卵を受け入れる免疫のしくみ」
.
受精卵は、お母さんにとっては半分がパートナーの遺伝子でできた『自分以外の存在』です
本来、体は異物を排除しようとしますが、
妊娠においては受精卵を優しく受け入れるために
免疫を一時的に変化させる必要があります
.
この調整を担っているのが、ヘルパーT細胞と呼ばれる免疫細胞です
これには異物を攻撃する『Th1』と、攻撃を抑えて育む『Th2』という2つのタイプがあります
.
また近年は、この2つの間に立つ『Treg(制御性T細胞)』という
“仲裁役”の細胞も、受精卵を受け入れるうえでとても重要だとわかってきました 2)
.
「ビタミンD不足とTh1/Th2バランス」
.
妊娠の成立には、攻撃型のTh1を抑え、受け入れ型のTh2を
優位にすることが大切だと考えられています
ここで重要になるのがビタミンDです
.
ビタミンDは免疫細胞に働きかけてTh1の活性化を抑え、
Th2の働きを助けるほか、仲裁役のTregを増やす働きも報告されています 2)
.
しかし体内のビタミンDが不足すると、
このバランスが崩れてTh1が過剰に優位になりやすくなります
.
その結果、Th1とTh2の比率(Th1/Th2比)が上がり、
母体の免疫が受精卵を受け入れにくくなる可能性が指摘されています 1)
.
※ただし、着床のときにはむしろ軽い炎症反応も必要とされており、
「Th1はすべて悪い」というわけではありません
.
妊娠はこのバランスが段階的に切り替わる、とても繊細な仕組みなのです
.
「反復着床不全や不育症との関連」
.
良い状態の受精卵を何度も子宮に戻しても着床しない『反復着床不全』や
妊娠しても流産を繰り返してしまう『不育症』
その要因の一つとして、ビタミンD不足による免疫バランスの乱れとの関連が指摘されています 1) 3)
実際に、反復着床不全や不育症の女性で、ビタミンD不足の傾向が報告されている研究もあります 3)
.
※ビタミンDを補えば必ず改善するとまでは結論づけられておらず、研究が続いている段階です
.
「今できること!」
.
当院では、ビタミンDの状態は血液検査(25-OHビタミンD)で調べることができます
自分がどのくらいかを知ることが第一歩です
そのうえで、ビタミンDは次のような形で補えます
.
✔ 日光:適度に日光を浴びると体内でつくられます
日焼け止めの“過剰な”使用は控えめにするのがおすすめです
(浴びすぎや肌トラブルには注意しながら)
.
✔ 食事:鮭などの魚、きのこ類、卵などに多く含まれます
.
✔ サプリメント:食事だけで難しい場合はサプリメントもひとつの方法です
ただし、大量摂取や質の良くないサプリメント選びは避けたいので、
必ず医師や管理栄養士に相談してから取り入れてください
.
ビタミンDは「摂れば摂るほど良い」ものではありません
当院の管理栄養士とも連携し、医学的なアプローチと毎日の食事ケアの両面から、
赤ちゃんを迎えやすい体づくりをサポートいたします
.
院長 柳由紀
.
*参考文献*
1) Kuroda K, Nakagawa K, Horikawa T, Moriyama A, Ojiro Y, Takamizawa S, Ochiai A, Matsumura Y, Ikemoto Y, Yamaguchi K, Sugiyama R. Increasing number of implantation failures and pregnancy losses associated with elevated Th1/Th2 cell ratio. Am J Reprod Immunol. 2021 Sep;86(3):e13429. doi: 10.1111/aji.13429. Epub 2021 Apr 20. PMID: 33835626.
2) Schröder-Heurich B, Springer CJP, von Versen-Höynck F. Vitamin D Effects on the Immune System from Periconception through Pregnancy. Nutrients. 2020 May 15;12(5):1432. doi: 10.3390/nu12051432. PMID: 32429162; PMCID: PMC7284509.
3)Zhao H, Wei X, Yang X. A novel update on vitamin D in recurrent pregnancy loss (Review). Mol Med Rep. 2021 May;23(5):382. doi: 10.3892/mmr.2021.12021. Epub 2021 Mar 24. PMID: 33760145; PMCID: PMC7986007.